華岡青洲の妻 (新潮文庫)

華岡青洲の妻 (新潮文庫)

パブリッシャー
新潮社
価格: ¥420

華岡青洲の妻 (新潮文庫)のレビュー

凄いの一言
なんとも形容し難い強烈な作品。
於継の生き様の凄まじさに不思議な感慨。

加恵の微妙な心情の変化に刮目。

於勝、小陸の華岡家を支える姿に感動。

直道、清洲の医術に賭ける執念。

全てが形容し難い迫力。

日本の底力ここにあり。

偉業の背景にある愛憎描写の妙
年長の杉田玄白からも教えを請う手紙が届いたほどの、日本、いや世界の外科医のパイオニアである華岡青洲。
全身麻酔を完成させるため、自ら被験者となり青洲の偉業に大きく貢献した妻と母。しかも妻は開発途上の麻酔薬のために失明までしてしまう。
こうした概要は、まさに美談として聞き知っていたが、本書はその背景にある女たちの愛憎を女性作家ならではと感じさせる繊細な描写で、ドラマチックな物語にしている。
全編を通じて感じるのは何より有吉佐和子の鋭さ。
ただ男としては困惑する内容でもある。
引き込まれます
最近、たまたま高野山を訪れ、
華岡青洲が和歌山県の出身であったことを初めて知り、
名前とその功績をなんとなくしか知らなかったので
本書を手に取りました。

とにかく一気に読みました。

自分も以前、全身麻酔を使った手術を経験しているだけに
麻酔のおかげで、ただ死を待つだけであった病気が
治せるようになり、また、痛みを伴わずに治療が施せるということの
大きさが、他人より少し理解できるような気がしました。

とにかく、どうなるか分からない、ましてや生命に関わることを
“試す”という事がどんな事なのか、その不安や恐怖、覚悟などは
とても想像できるものではありません。

嫁姑の確執については、脚色されたものだと言われているようですが
フィクションなのかノンフィクションなのか、分からないような
感覚で読みました。

麻酔手術が行われていなかったら失明していたかも知れない私は
実験台になることを自ら申し出て、その結果失明した青洲の妻・加恵には
なにか感じるところがありました。

本書は、世界に先駆けて麻酔手術を行った華岡青洲と
彼を支援し続けた家族について知るために、そして、
力強い文章で読者を引き込む文学作品として
是非お勧めします。
美談の陰の、冷戦。
そもそもこの嫁と姑、あからさまに対立したのは、青洲の麻酔実験の被験者にどちらがなるかを争ったときくらいなのである(しかもそのときも、互いを思いやるような言葉を遣いながら言い争っている)。
しかし、それ以前の彼女たちの『冷戦』が、背筋がざわめくほど新鮮だった。
お互いのふとした一言や行動を、お互いが勘繰り、気づいたら、露骨に対立はしないまでも、互いの間に冷ややかな空気が流れているという状況に陥っていたように思える。
そして、そんな二人の女の対立を利用する形で、青洲は麻酔の人体実験に踏み切った。

互いの思惑や戦いを、露骨にではなく、しかし、読者に分かりやすい形で描ききった作者に、敬意を表したい。
姑vs嫁
青洲の助けになりたい、という名目で自ら人体実験の役を買ってでる嫁と姑ですが、つまりは嫁と姑の争い。最後は嫁姑ではなく女同士のプライドをかけた戦いになってます。この凄まじい女同士のバトルには青洲の医学会に残した明晰もくすんでしまうほど!う~ん、鳥肌モノです(TOT)!